春蘭
最近では貴重種というぐらい見かけなくなったシュンランです。冬に咲く寒蘭に対して、春に咲く野生蘭なので春蘭と名付けられました。江戸時代には斑入りのシュンランなどがもてはやされ、古典園芸種として現在に引き継がれています。山渓・野草の名前(春編)によると古名でホクロと云われ、別名でジジババとも言われています。どちらも花の特徴から付けられた名前です。唇弁の紫色斑紋をホクロに準えたからと、花茎の上部がお婆さんの“ほっかむり”に、下の方をお爺さんの“白ひげ”に準えてジジババになりました。黄緑色の花は目立ちませんが上品で、ロク的には如何にも美味しそうな雰囲気を持っています。
桜茶と同じように春蘭の花を塩漬けにしたものを蘭茶として祝いの席に出すようです。花と花茎は茹でて酢の物にしたり、そのまま天ぷらにしたりします。根を乾燥させ粉にしたものはひび・あかぎれに効くようです。昔は食用とされていたぐらいたくさん山にあったのでしょう。最近ではクヌギなどの落葉樹の根元に咲いているのを見付けると嬉しくなります。食いしん坊のロクといえども、来年も同じ所で咲いてくれるかの期待を込めて見守ります。人が採り過ぎたというより鹿や猪に食べられてしまうのかも知れません。
「春蘭を 鏡と背筋 伸ばす吾」