夏椿
清楚なナツツバキの白花が咲いています。植栽された根元には、椿と同じようにポトリと落ちた花が寂しげな雰囲気を醸し出します。ナツツバキはツバキ科ですがナツツバキ属に分類され、落葉高木で花も一日花なのです。日本原産と云われていますが、手持ちの図鑑では朝鮮半島にも自生しているようです。ここまで書けば、これが沙羅双樹ではないことが判ります。別名で「沙羅の木」といわれ、お寺の境内などに好んで植えられています。昔の僧が、日本にもきっと沙羅双樹があるはずと探しまわり、山に自生しているナツツバキを沙羅双樹と勘違いしたようです。
「祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響あり。沙羅雙樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久しからず、唯春の夜の夢の如し。猛き者もつひには滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。」平家物語の冒頭部分はお馴染みです。今日から山旅に出ますので、しばらくお休みしますが、帰国した頃には傲慢な政治家の夢が風の前の塵になっている事を願っています。
「ハンカチを 振って見送る 夏椿」