実が熟れて種を落とすまで
シキミの花(参考画像)
シキミは毒性が強い植物だと言うことは昔から知られていた。観察会でも名前の由来は「悪しき実から来ているのですよ」と伝えてきた。でもその説明では誤解を招くことに気付かなかった。植物界では唯一「劇薬指定」を受けている猛毒の植物で、実は言うに及ばず、茎や葉っぱ、根まで含めて全部が毒だという注意喚起が必要だった。ただ実が料理に使われる八角に似ているので、誤食を避けるために「悪しき実」としたのだろう。
土葬された墓地の周りに「樒」を植栽するのは、オオカミやツキノワグマからの食害を守るためとされている。動物たちは本能的にシキミの臭いを嫌うらしい。焼香や抹香、線香などにはシキミの葉や樹皮を乾燥させた粉末が練り込まれているようだ。通夜に線香を炊きつづけたり、焼香をしたりするのは、天国に辿り着くまで、故人を動物たちから守り続けますという側面を併せ持つ。
ついでに紹介しておきたいのはマッコウクジラの名前も、シキミから作られた抹香と同じ臭いを内臓の一部に持つところから名付けられたらしい。これも目から鱗である。
たまたまで散歩途中で褐色の種が落ちていたので、エゴノキかなと確認すると、シキミの実から種を弾き出しているのに出くわせた。八角に似た実は何度も観ているが、実が熟れて種を落とす段階のものを観察するのは初めてだった。
「悪しき実よ 神在月に 逝きし義母」