空蝉(うつせみ)
おびただしいほどの蝉の抜け殻
「樹のみち」と蝉の抜け穴
「空蝉」と言う表現が相応しくないほど、蝉の脱け殻が大樹に付いている。
ハイキングをライフワークとしているロクは、呆け防止で5・7・5を作っている。とても俳句と言える代物ではない。でも俳句らしきものを作りたいとの意識だけはあるので、自分
のことを自称「ダブルハイカー」と呼んでいる。ハイキングをこよなく愛す「俳カー」という意味合いである。なかなかの造語だとほくそ笑んでいる。そんなハイカーだから、蝉の脱け殻も空蝉と表現したくなる。「空蝉」と言えば源氏物語に結びつく。万葉集などの古典にも登場するし、小説や俳句でも列挙できないぐらいに取り上げられている。俳句を作る方なら一度は使ったことのある「空蝉」だろう。
地球温暖化でクマゼミの北上が続き、最近では本州最北端まで分布域を拡げているのではと危惧している。大泉緑地には「樹のみち」というチップを敷き詰めた遊歩道が作られている。その林におびただしい程の蝉が生き続けている。蝉は1週間程の命だと言われているが、それは地上に出てからの話で、地中では7年ほど幼虫として生き続けている。地上の蝉は子孫を残すための最後の仕事として、雄ゼミが力の限り胸部の共鳴板を振動させ、雌にエールを送り続けている。まさに光源氏が空蝉に想いを寄せたように。
「風流れ 覗いてみたき 蝉の穴」