立葵(タチアオイ)
万葉集にも詠まれているタチアオイが畑などで咲いている。中国から古くに渡来してきたと言われているが、時代特定まで至っていないらしい。薬草・観賞用として植栽されている。利尿効果があるらしいが、ヨーロッパ産のビロードアオイなどはうがい薬として用いられている。アオイ科は一日花が多い。下から順次咲いて行く「立葵」が本来のアオイとされ、名前の由来も「仰日」(あおい)から転訛したものと考えられている。別名で梅雨葵とも云われている、今の季節にピッタリの花だ。
タチアオイの面白い利用法では「茎を水に浸け、皮を取り除いたのち、乾燥させたもので焼き灰を作る。その灰の中に火種を入れておくと久しく消えない」という記述が「大和木草』(貝原益軒編纂)にあるらしい。当時の木草学は薬用植物を扱う学問だったが「大和木草」によって植物学まで拡大された。西洋からの植物学書籍が入ってくるまでは、日本史上最高峰の生物学書とされた。小野嵐山など植物の雄を輩出してきたが、牧野富太郎に至るまで「大和木草」は愛読されたことだろう。
「立葵 足止めだけが 憂きことよ」