山香(ヤマコウバシ)の紅葉
独特の色合いで紅葉を始めたヤマコウバシ
仙人の髭をたくわえ始めたセンニンソウ
関東以西ではお馴染みの樹木で、秋から冬場の観察会で出逢えたら、必ずと言って良いほど講釈を垂れたいヤマコウバシである。今年は殊の外綺麗な色合いで紅葉している。山を冠するクスノキ科だが、比較的都市部に近い林内にも自生している。名前の由来はクスノキ科特有の香りを持ち、山に自生するという安易なネーミングである。
話題性のひとつは雌雄異株だが、日本には雄株が存在せず、雌株だけで結実するという変わり種である。最も話題性に富むのは、秋に紅葉をはじめ、冬には枯れるのだが、春の芽吹きまで枯葉を落とさない。落ちない葉っぱのゲンを担いで、受験生の合格祈願のお守りとして人気を博している。神社などではパウチしたものを、お守りとして授けている処もあるらしい。
また、借金に四苦八苦している農家の息子が、機転を利かせてヤマコウバシの前に立ち、この木の葉が落ちるまで待って下さいと懇願する。秋には落葉するだろうと借金取りは慈悲心で待つことを承諾する。ところが冬になっても葉を落とさない。借金取りを春まで待たせたと言うことで「親孝行の木」と言うことでも知られている。葉っぱを春の芽吹きまで落とさないというのは、常緑樹だった名残と考えられている。
夏を白花で飾ってくれたセンニンソウが結実して、名前の由来になっている仙人の髭を出す準備をしている。
「渓流の 照葉が日射し 独り占め」