ロクさんのアクティブライフのブログ

自然観察を通してのシニアの元気報告を575に託してお届けします。

自然観察を中心に、アクティブに活動している様を、
写真とコメントを交えて俳句にまとめています。
毎日発信でシニアの元気報告になっています。

「ロクさんの山ある記」より

 久しぶりの便りになります。お元気でしょうか、お伺い申し上げます。
 私は、今、憧れの大雪山に来ています。空路伊丹から千歳に飛び、旭川を経由し、バスで層雲峡まで来て、そこからリフトで黒岳に登るルートです。
 途中、休憩を取ることなく、一気に層雲峡まで来てしまった感じです。
 何年か前に北海道を旅行したときは、観光バスで周遊しながら、滝を見たり、切り立った岩肌を見上げたりしながらの層雲峡だったのですが、今回は、たんなる通過点、アプローチとしての層雲峡でしかありません。


 スイスの三河川源流を訪ねる旅から帰って、まだ4日しか経っていません。会社へ出勤したのは3日間だけです。休暇が旨く取れたものだと自分でも感心している始末です。
 そういえばスイスの土産も手渡せないうちに北海道まで来てしまいました。
 リフトを降りると、人慣れたエゾリスが近寄ってきます。ペットとして鴨を飼っている看護婦の綾ちゃんが、めざとく見付けてエサを与えています。
 ここまでは観光客もたくさん登ってきます。
 ここから私たちの登山が始まります。黒岳頂上を経由して、黒岳石室へ下り、大雪山縦走の第一夜を過ごします。
 今回はU病院のK先生とその関係者、その関係者というもの何か変ですね。同じ病院の看護婦さん3名、昨年九州の屋久島を一緒に旅した仲間たち、そして私たち夫婦、総勢10人の山旅となりました。もちろん、屋久島で一緒に露天風呂に入った看護婦の咲ちゃんが、今回も参加したことは言うまでもありません。
 リフトを降りて園地を過ぎると、すぐに登りが始まります。7月も半ばだというのに、所々に雪が残っています。
 55リッターのリュックに20数キログラムの食糧、テント、寝具などをパッキングしてあるので、肩に食い込みます。若い頃なら苦にはならなかったのですが、もうすぐ58歳という年には厳しいものがあります。
 滑らないように一歩一歩気をつけながら小さな雪渓を横切ります。看護婦さんたちの歩きにも注意を注ぎながら・・・。


 フーフー、ヒーヒー言いながら黒岳頂上にたどり着きました。
 ガスが掛って殆ど視界はありません。時々、ガスの切れ目から展望が開けます。写真で見た大雪の風景が拡がります。眼下に今夜お世話になる黒岳石室のや目が見えます。緑と白と屋根の赤のコントラストがとても美しいのです。
 全員が揃うのを待ちきれず、目と鼻の先にある石室ヘ急ぎました。
 途中、高山植物がたくさん咲いています。名前はK先生に聞かないと判りません。とりあえず白い花、黄色い花、ピンクの花、紫の花としておきましょう。
 『日本一高いビール』と石室入口に吊り看板がぶら下がっていましたが、値段を聞く間も惜しんで注文しました。ビールを飲んで「幸せだな」と思ったことは、今までの人生で幾度のありましたが、今回ほど「うまい!」と思った記憶はありません。喉にしみわたる旨さでした。700円の缶ビールを高いとは感じませんでした。
 先着の登山者たちは既に夕食の準備をしています。山での行動は都会時間より数時間は早まります。


 私たち全員が小屋に到着したのは5時半を回っていました。予約してあったのですが、改めて10人分の寝床を確保するために、小屋の青年が、先着グループのリュックやシュラフを整理して、私たちのスペースを空けてくれました。
 日の暮れないうちに、私たちも夕食の準備に取り掛からなければなりません。
 食糧の軽量化に努めてきましたが、それでも缶詰類などは重いので、第一夜は缶詰と野菜サラダ(乾燥)、スープという少し贅沢な夕食となりました。漬物類も水で戻すだけで良いと言う便利なものが出来て、以前と比べればずっと楽になりました。
 ただ、ガスストーブのボンベを機内に持ち込むことができず、携帯燃料持参と言うことで荷物が増えてしまいました。火力も弱く調理時間にロスがあり、夕食を始める頃には、既に日も落ちてしまいました。
 ヘッドランプの明かりを頼りに、若い看護婦さんたちとの食事は楽しいものでした。心が、明日からの未知への期待に、膨らんでいたからかもしれません。
 そんな楽しい食事も、明日のことや、他の登山者のことを考えると、早々に切り上げ無ければなりません。後片付けは明朝ということで、全員シュラフに潜り込みました。既にあちらこちらから寝息が聞こえてきます。


 随分と眠ったつもりですが、時計を見ると間だ3時です。起きるには早過ぎると、トイレにでもと足音を忍べせ外に出ました。満天に星、星、星です。都会では星の数も少ないので、星座は直ぐに見つけ出せるのですが、ここでは北極星を探し出すもの一苦労です。どうにかカシオペアと北斗七星を見つけて、にぬふぁ星の見当を付けました。手を伸ばせば届きそうなところに星が瞬いているのです。
 夜露に濡れた椅子に腰を降ろし、煙草に火をつけました。私たちのグループの全員が煙草など吸わないので、こんな時しか堂々と吸うことができません。
 「たばこの匂い好きなのです」と言ったあなたの言葉がよみがえります。
 縦走に入るとたばこは厳禁です。息が続かなくなるのです。海外旅行や山歩きの度に禁煙するのですが、長続きしたためしがありません。家に帰るとつい煙草を買ってしまいます。意志の弱さもさることながら、決意が弱いからだと思います。
 妻が面白い例えを教えてくれました。最近は禁煙と言うより、卒煙と言うらしいです。だから卒煙できない人のことを「煙児」だというのです。卒煙の決断する日がなかなか訪れず困っているところです。数日間だけの体験卒煙は今日から始まります。


 東の空が少しずつ白んできました。2人、3人と小屋から目をこすりながら出てきます。K先生も早暁の大雪を撮るつもりか、カメラを手に小屋から姿をあらわしました。
 そろそろ、朝食の準備をしなければならないので、この辺でペンを置きます。ではまた。


 ブロガーのツノさんが短編をアップされました。それに刺激を受けて、以前書いた山ある記の一部を紹介したくなりました。小説も発表しましたが、今はそんな気力も体力もありません。ツノさんを陰から応援するだけです。

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