夏椿(ナツツバキ)
カリンに似たつるつるの木肌
一日花のナツツバキが、梅雨時の鬱陶しさを消し去ってくれるような清々しさで咲いている。日本では自生しないインド原産の「沙羅双樹」に似ているとのことで「沙羅の木」とも呼ばれている。きっかけは森鴎外が沙羅双樹と間違って「沙羅の木の花」と詠んだことによるらしい。花弁にも特徴がある真っ白な花を優雅につけ、直ぐに散り落ちる儚さと、皮が剥がれてつるつるした木肌の美しさから、お釈迦様が入滅した時の「沙羅双樹」霊樹伝説に併せて、日本の寺院などに好んで植栽されるようになった。今でもナツツバキと沙羅双樹は同じものだ、と思っている方も多いように見受けられる。
夏山で自生しているナツツバキに出合うと、汗を拭う休憩場所として立ち止まるので、意外と印象に残っている。ツバキ科で一日花というのも珍しい。トンボのメガネの下見に訪れた奈良の庭園「吉城園」では、苔や低木の上にポトリと花弁を落としている。たぶん庭園管理者は毎日落ちたナツツバキを拾い集めておられるのだろう。
ツバキは常緑だがナツツバキは落葉である。日本の野生ツバキはヤブツバキ、ユキツバキ、サザンカの三種だと紹介されているので、ナツツバキはツバキ科だがナツツバキ属として別種扱いされている。
夏の白花に惹かれるので、どうしても白い花にカメラを向けてしまう。キキョウの白花も気高く咲いていた。
「苔の上 落ちてなお佳し 夏椿」